それぞれのイストワールがある、近藤史恵 スティグマータ、自転車本読書

スティグマータ
近藤史恵 スティグマータ

ツールも始まっていよいよ、
自転車ロードレースも本番って季節だ。

今回はそのツール・ド・フランスが舞台の近藤史恵の新作、スティグマータ。
毎回それっぽいタイトルを自転車小説に付けてる彼女の作品。
単純にスティグマータ=聖痕と訳すだろうか。
その意味合いからいろんな表現に例えられるが、
今回は罪を背負ったものとか、そんな意味で付けたタイトルか。

と言うのも、
今回はメネンコと言うかつてのスター選手がドーピングでロードレースの世界から退いた後、
数年ぶりに復帰してツール・ド・フランスを走ると言う話しだからだ。
英雄でありドーピングしたと言う嫌われ者である彼が、
フランスのオランジュフランセで走るチカに同チームで走る事になった伊庭が相談を持ちかけて来たところから始まる物語。
メネンコに対して脅迫して来た選手が居るのを見張って欲しいと…

近藤史恵の自転車小説1作目サクリファイスから、
ミステリィな要素を盛り込んで来た引き込み方から今回もその謎展開で読者を引き込む。
異端の英雄メネンコを軸にロードレースが進む。
ここ最近見ている人にはどうしても思い浮かべてしまう選手像があるだろう。
あの当時はまだ疑惑のままだったけれど。

チカが所属するオランジュフランセの中では、
リーダーはニコラでチカは山岳を得意とするアシストだ。
同じくメネンコと同チームで活躍する日本人の伊庭はスプリンターで日本人初のステージ優勝を期待されている。
そんな先頭だって活躍して行く伊庭に対してアシストと言う役回りに走るチカは、
その立ち位置と自分が走る意味を考え続ける。
ゴールスプリントに臨んだ伊庭が「二位と一位じゃ全然違うんだよ!」と叫だのは印象的だ。

DSC07987.jpg

ツールが始まってパリ・ルーベの石畳コースを抜け、
総合優勝を狙う選手とそのチームの状況が上手く描かれていてレースを見る人にはとても没頭出来る。
山岳を得意とする傾向にある総合系の選手は個人TTが苦手な場合もある。
そんなレースの中でかつての幻影に悩むチームエースのニコラの心情とか描き方が秀逸だ。

チーム内での自分の走り方への葛藤と、
メネンコに対する脅迫を追う主軸と、
それでも進むツール・ド・フランスのレース展開とチームのエースの事。

最終週の山岳コースでウエットな路面の中、チカは決死の覚悟で臨むアシストとしての姿。
小説だけど実際のレースを思い浮かべてみてしまう描写力がさすがだった。

今でも現役で走っている土井選手が書いた本のタイトルの通り、
彼らの物語がそれぞれにあるんだろうな。
面白かった、ツール・ド・フランス開催中に読めた事に感謝。








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